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第30回学術集会を開催するにあたって

 日本食物繊維学会第30回学術集会を,令和7年10月18日(土)・19日(日)の2日間にわたり,広島県広島市の広島大学・霞キャンパス内の広仁会館にて開催いたします。昨年度の学術集会は千葉大学にて開催され(集会長:江頭祐嘉合先生),今年度は中国地方を代表する都市の一つである広島にて開催の運びとなりました。
 広島は歴史的にも国際的にも重要な都市であり,世界遺産である原爆ドームや厳島神社を有するとともに,瀬戸内の豊かな自然と食文化に恵まれた地域です。瀬戸内海産の魚介類,広島菜,広島レモン,そして独自の発酵食品文化を背景に,伝統と革新が融合した“食のまち”としても知られています。学術的な関心からも,これらの食文化が健康や腸内環境に与える影響,さらには食物繊維との関係性について考える良い機会になるものと期待しております。
 今回の学術集会では,「腸内細菌が紡ぐ代謝ネットワークと疾患予防」をテーマにシンポジウムを企画いたしました。腸内細菌が産生するさまざまな代謝物は,宿主の免疫,代謝,神経機能にまで影響を及ぼすことが近年の研究で示されており,食品科学や疾病予防の分野で大きな注目を集めています。本シンポジウムでは,この分野を牽引する4名の先生方にご講演いただきます。まず,西山千春先生(東京理科大学先進工学部)には「食品・腸内細菌由来成分による免疫細胞の遺伝子転写調節を介した免疫応答制御」と題して,食品成分や腸内代謝物が免疫に与える影響についてご講演いただきます。続いて,笹部潤平先生(慶應義塾大学医学部)には,「微生物と宿主のアミノ酸キラルバランスがもたらす生理機能の調節」について,独自の視点からお話しいただきます。また,松本光晴先生(協同乳業株式会社研究所)には,「腸内菌叢由来ポリアミンの重要性とその制御による疾病予防」と題して,機能性成分としてのポリアミンに関する知見をご紹介いただきます。最後に,石塚 敏先生(北海道大学大学院農学研究院)には,「摂取エネルギーの増加に伴う胆汁酸代謝変動と未病症状−腸内細菌叢との関係を考える−」と題し,胆汁酸と腸内細菌叢の関係性について,代謝異常との関連も含めてご講演いただく予定です。
 また,10月19日(日)午後には市民公開講演会を同会場にて開催いたします。今回のテーマは「健康寿命の延伸と食物繊維」です。基調講演には栢下 淳先生(県立広島大学)をお迎えし,高齢者の食事と栄養管理について分かりやすくご講演いただきます。さらに,内藤裕二先生(京都府立医科大学),佐々木菜穂先生(十文字学園女子大学),そして私,鈴木卓弥(広島大学)より,食物繊維の健康への効果や腸内フローラと健康との関係を中心とした話題について,それぞれの立場から講演を行う予定です。広く一般の皆さまにとっても,日々の食生活を見直すきっかけとなる機会となれば幸いです。
 本学術集会および市民公開講演会を通じて,腸内細菌や食物繊維に関する最新の知見を共有し,食品・栄養科学の今後の発展に寄与できる場となることを願っております。会員の皆様をはじめ,食品・健康に関心のある多くの方々のご参加を心よりお待ち申し上げます。

第30回学術集会長 鈴木卓弥
(広島大学大学院統合生命科学研究科)